自分のことを無機物だと思い込めば無敵

誰かに必要とされたいけれど、別に誰でもいいというわけではなくて、私が必要としている人とは別の人で、究極私がいなくても生きていけそうな人に、私のことを必要な人間だと半永久的に思っていてほしい。

 

金曜日の夜、高校の時の同級生にいろいろなことを言ったしいろいろなことを言われたけれどほとんど覚えていない。彼はきっと頭が良くて感受性が強い、そのせいで私が知らないうちに放っている毒電波的なものをいともたやすくキャッチして、彼も気づかないうちに私に投げ返してきているような気がする。最終的に私はいい年して大泣きした。

 

私には弱点があって、ハートフルな疑似家族ものの映画やドラマを鑑賞するとか、アダルトチルドレンの手記や自閉症の人のエッセイを読むとか、あとは自分の家庭環境の話を事細かにさせるとか、それだけで簡単に泣くようにできている。別に泣きたいわけじゃなくて勝手に泣けてくるだけだから心配しないでほしいんだけど、大の大人が急に泣き始めたら普通はびっくりするよね。

多分だけど私は人や物に自分の意見や考えを反射させて物事を理解するような節があるようで、私が投げかけているものの中に私の弱点が必ず入ってしまっているせいで、その部分だけを返してくるような人や物と出会ってしまったときに泣けてくるのだと思う。自分語りなんかは最悪だ。ポケモンで言えば、ゴーストはゴーストに弱いみたいなイメージだ。だから私は私に似ている人もだめで、自分に似ている人を見つけるとうれしくなって近づく癖に、間に分厚い壁を置くみたいなめんどくさい付き合い方をしたがる傾向にある。

 

金曜日大泣きした理由を覚えていない。次の日彼とのLINEを見たら意味不明な文字列が並んでいた。とりあえず昨日のことは気にしないでと送ったけれど、彼に気にしないでという内容の連絡を送るのはこれで何度目かわからない。どれだけ気にしなければいいんだ、ていうかもう近づかない方がいいのでは? お互いに。と思ったけれど、きっと私は彼のことを必要としているような気がする。彼は多分私に似ていて、そんな変な人はあまりいないからだ。

 

私と私に似た人が、お互いを必要だと思ったままで、別のだれかに必要とされて、お互いを必要だと思ったままで、別のだれかの必要をまっとうするような、そういう関係を築いていきたい、それが一番傷つけあわない、幸せな選択という気がしている、大変身勝手な話で、身勝手と思うことすら身勝手な話だけれど。

 

わたしをすきなひとが、わたしに関係のないところで、わたしのことをすきなまんまで、わたし以外のだれかにしあわせにしてもらえたらいいのに。わたしのことをすきなまんまで(最果タヒ「夢やうつつ」/詩集「死んでしまう系のぼくらに」収録)