徐に訪れる死

中学2年生の時に私はゆっくりと死んだ。

 

 

人はすぐに壊れてしまう。汚い言葉を浴びせ続けるだけで中学生女子の心なんて簡単に壊すことができる。父から罵倒され続けたことで、私は自分自身がこの世界で最も不必要な存在だと思っていたし、すぐにでも死ぬべきなんだと思っていたし、勇気がなくて死ねない自分を、これだからダメなんだろうなあ、と思っていた。

あの頃の私は普通に笑えなかった。

あの頃の私は人から優しくされてもそれは自分を貶めるための罠だと信じていた。

あの頃の私は自分以外の人が怖くて生きているのが申し訳なかった。

あの頃の私はどこにいても罵倒されてしまう気がして前髪で目を隠して耳はヘッドフォンで塞いで下を向きながらじゃないと外を歩くことができなかった。

あの頃の私は冗談じゃなく本気でいつも死ななければならないと思っていた。

あの頃の私は多分、すでに死んでいた。

 

家で食べているものは豚の餌と呼ばれて、友達を家に呼べばお前が人を呼んだせいで家が汚くなったから掃除をしろと言われて、勉強をすれば勉強道具を捨てられ、絵を描けば辛気臭えことをするなと怒鳴られ、ただ座っていれば社会のゴミのくせにぼーっとしてるんじゃねえよ生産的なことをしろと言われ続けて、私は何もすることができなかった。何をするのも許されなかった。顔をはたかれたり物を投げつけられたりしても私は動くことができなかった。目の前で母が父に殴られたり顔を蹴られたりして血を流していても私は何もできなかった。こんなのは死んでいるのと同じだと思った。

 

 

中学2年生の時に私はゆっくりとゆっくりと誰にも気づかれずに死んだ。