私の父
父は無邪気な人だった。
私がまだ小さかった頃、父がまだ私をかわいがってくれていたころ、もう今はあまり思い出せないけれど、父はとても無邪気な、子供のような人だったと思う。
天気がいいから、という理由で仕事を休んで釣りに行って、真っ赤に日焼けして帰ってきて釣ったタコを娘に自慢したりとか。
地元仲間とつるんでバーベキューをしたり海に行ったりとか。
バンド仲間を集めてオリジナルの曲を作って宅録したりとか。
親というには子供っぽすぎるきらいがあるけれど、それでもこのころの私は父を父として人間として好きだった。
父もまた、私を大切に思っているはずだと思っていたし、疑う余地なんてどこにもなかった。
親子とは、家族とはそういうものだと思うまでもなく当たり前のことのように享受していた。
信頼とか親子の絆とか家族のつながりとか、そういうものを着実に積み上げている、確かに築き上げているとずっとずっと思っていた。
そう思い込んでいるだけだった。